『食堂かたつむり』 小川糸

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『食堂かたつむり』
一言でいうと、主観目線のある”かもめ食堂”といった感じでしょうか。
ひとまず主人公が食堂を開くまではそんな感じ。
食べものについてのていねいな描写も、なんだかほっこりと
あたたかいし、なかなか悪くない………印象でした。
食堂をひらくまで。
そして食堂をひらいた後の内容について、
さらにもう一言をつけ加えると、
 やっぱり、かもめ食堂は、
 あの主観をとりのぞいた感じが良かったんだな……と。
 再確認する感じ。
………かな(笑)。
正直言って、個人の好みの問題なんですが、
食堂をひらいてからの内容はハッキリ言ってしまうと、
私の趣味とは、かなり大きくずれがありました……。
・食堂は1日1組
・メニューはあらかじめ面談やメール相談してから決める
・スープ(ジュデームスープ)に入れる野菜は本人を見てから決める
などなどの食堂の”こだわり”が
そもそも、わたしには解せないわけで。
そんななので、本にもちょっと感情移入できず……。
まあちょっと辛口で言えば、上の「こだわり」は、
食堂としてのこだわりというよりも、料理人のエゴのように
思えてしまいますね。お金を払わず、無料でごはんを作ってくれる、
絵本に出てくるような、森のおばあさん……とかならともかく。
 客にプレゼンさせて、
 客を待たせて、
 それを前提として料理を出す食堂なんて……。
まあ。でも、途中で読むのをやめて、あれこれ言うのは
マナー違反かな、と思って、とりあえず、
最後まで読むことに……。
でも結局、印象はたいして変わりませんでした。
時折、出てくる下品な空気にもなじめず。
なんていうんだろう……読み間違ってるかもしれないけど、
そういう下品な空気に作者自身が無意識に嫌悪感を
持っていながら、理性でおさえて、下品なエピソードを
盛り込んでる、みたいな印象というのかな。
下世話な世界への”しょうがないやつらだなあ”的な
呆れ半分の愛情みたいなのが感じられず、
描かれてる印象があるからかな。
読んでてもなんとなく嫌悪感が残り香をのこす感じ。
ま、それはともかく。
でも唯一、気持ちがグッときたポイントもありました。
最後のおかんの手紙は、
個人的にはなんだかグッときた。おかんの守り神のトリックに。
トリックは最初からばればれなんだけど、なんかそこに少し、
そのこめられた愛情にグッときました。
いずれにしても、
「食べるという行為にこめられた命の犠牲?」
といったものがテーマだったとしたら、
『いのちの食べかた』を観たあとではなかったのが幸いだったかな。
せめて観る前に読んだのが救い。
(映画観たあとだったら、さらに読後感が悪くなってそうです……)
※個人的な好みにもとづいた感想なのであしからず!!